エーザイの株主総会

ＩＲが良いと評判のエーザイ。株主総会に出席するのは初めてです。場所は後楽園のＪＣＢホール。近いので自転車です。ＪＣＢホールも初めてですが、何やらロックバンドのライブか現代劇でもやるような感じの空間です。

株価が低迷しているにも拘わらず、なかなか良い雰囲気の株主総会でした。株主を大切にしてます、というメッセージを送っていると、質のよい株主が集まってくるものなのかもしれません。

まず始めの社長のプレゼンテーション。よくアップルのスティーブン・ジョブズが新製品発表の時にやっているみたいに、壇上を歩き回りながら話をする、というスタイルで、聴衆に向かって話しかける演出が成功していたと思います。企業理念なんてものはどこの会社のものでも、字面を読んでいると、まあきれいごとばっかり言っちゃって、などと思ったりするものですが、こうして話されると、これは信じてもいいのかなという気持になったりしますから、やはりコミュニケーションというのは大切です。

内容的には、十分な説得力があったというわけではありません。アリセプトというドル箱を明け渡してしまうわけですから、その分をなんとか日本と中国の伸びで埋めて、という程度の説明では、不安は不安のまま残ります。中国は前期48％伸びたってことですが、なにしろまだ全体の2％ですからね。日本国内の売り上げは確かに前期8％伸びて営業利益も2割増ですから、好調ではあります。ただ、アリセプトってとにかく大きいですからねえ。今後癌治療の分野中心に出てくる期待の新薬も、アリセプトと比べると、どうなんでしょ。これからの新薬はエーザイ単独で販売するからアリセプトよりも利幅は大きいとの説明がありました。それは大変結構なことです。

やはり当面成長性には期待できないとして、投資対象としてのエーザイの魅力は現在5％もある配当利回りでしょう。で、この配当がどうなるかも気になるところです。2009年度は10円増配で、配当性向が少し100％を超えました。配当をたくさん出してくれるのは嬉しい反面、大丈夫？というのが正直な感想。これから益々厳しくなるのになぜそれまでして増配なんでしょう。この点の質問の答えは「純利益が減っていても企業買収による償却の発生が大きく、キャッシュ・インカムは前期も6％と順調に伸びているから」というものです。さらに別の株主から「そうは言っても企業買収でお金を使っていることは確かではないか。借金は借金なんだからバランスを考えて配当した方がいいのでは？」という質問も出ました。株主から配当出し過ぎ、というコメントが出るんだから、立派、立派。

会社の言うことをそのまま信じれば、キャッシュ・インカムがざっと年1200億円、これはしばらく横ばいを維持できる。これに対して配当総額は約400億程度だから現在の配当水準は持続出来る、というわけで、利回り5％の株価はやっぱり買い、ということになりますよね。でも長い目で見て、新薬にどのくらい期待していいのか結局よくわからないというのが結論と言えば結論なのです。あとは会社の経営理念を信じて、いい会社なんだからきっと大丈夫、と思うしかないわけです。だからやはりコミュニケーションって大切ですね。

その他印象に残った質問などを書き連ねてみると…

世界各地の地域の事情を考えた、受け入れ可能な（英語で言うaffordableってことですね）価格政策と言うけれど、日本で2000円の薬を例えばバングラデシュで本当に80円で売れるのか。実際そういうケースはどうやって判断するのか。
→　これに対する答えは、理念を繰り返していたに過ぎず、ちょっと現実感に欠けていた感じです。理念は分かるけど、そうはいってもねえ、というのが質問の主旨だったと思います。

取締役11名中7名が社外というのは、現場を知る執行系が少なすぎるのではないか。薬のことをよく知らない取締役に責任とってます、と言われても、取ってもらっているように思えない。また、社内から昇進する人が少ないと、現場の士気にもかかわるのでは？
→　コーポレート・ガバナンスの考え方についての、ある意味根本的な問題です。私も社外取締役がそれほどいいシステムなのか、と常々疑問を感じているのです。キャノンなんかは正面切ってこの疑問を呈していますよね。社外取締役や委員会設置方式の理念は理解するけど、もろ手を挙げて礼賛する気にはならない、というのが正直なところです。

ちょっと長くなりましたが、本日の感想でした。

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